約 1,206,978 件
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/72.html
目が、合ってしまった。 それも同時に。もし、一瞬でもタイミングがずれていれば、 先に気付いた方は見なかった事に出来ただろうに。 途方も無く、長い一瞬。先に口を開いたのはラブの方だった。 「……偶然だね。…ブッキー。」 美希と別れた後、気分転換に遠出しようかと電車に乗った。 でも結局、何を見てもどこへ行っても気分が上向く事も無く。 一人の時間を持て余しただけで早々に引き返した。 そんな時だ。同じ電車の改札から出てきたラブに会ってしまったのは。 自分も改札口から出てきたばかりなのだから、これから出掛けるとも言えない。 帰る方向は同じ。必然的に並んで歩くような形になってしまった。 人ひとり、間に挟めるくらいの微妙な距離。 ラブの側の皮膚が服の下でビリビリとざわめいているのが分かる。 朝は、ラブに会う事も覚悟を決めてきたはずだった。 しかし、美希に偽らざる自分の気持ちを吐露し、何とも言えない 粘りついた空気に苛まれた後だ。 まさか不意打ちのようなラブとの接触があるとは夢にも思わなかった。 今の祈里には偽悪的に強がって見せる気力は残っていない。 走って逃げ出したい衝動を抑えるので精一杯だった。 「せつな、大分熱は下がったんだ。」 美希から聞いてない?そう、ラブが話掛けてきた。 「……聞いた。」 「顔色も、良くなってきたし。学校もそろそろ行けそう。」 「………そう……。」 「少し良くなると、すぐに普通に動き回ろうとするから かえって中々熱が下がんなかっんだよねぇ。」 「………ふぅん……。」 「せつなの大丈夫ほど当てになんないものはないんだから。」 ラブも話しながらも祈里の方を見ようとはしない。 それでも、その声は落ち着き払っていて祈里のように 動揺を押し隠している風には感じられなかった。 ラブの口から語られるせつなの様子。 まるで自分の胸にせつなをくるみ込むような、その声。 余裕有り気な態度が祈里の胸の中にチリチリと焼けるような妬心を産む。 祈里は唇を噛み締める。 今だにラブに嫉妬している自分が情けない。 もう十分ではないか、これ以上ラブもせつなも苦しめられない。 ラブとせつなが望むなら、どんな罰でも受けなければいけない。 二人が心置き無く糾弾できるように、いつでも顔を上げていなくては いけないのに。 罪の大きさに比べ、自分はなんと小さいのだろう。 そして……なんと汚らわしいのだろう。 気の無い生返事を繰り返すだけの祈里を気にする風もないラブ。 せつなは、きっとラブの腕の中で傷を癒しているのだろう。 ラブはせつなを抱き締め、その傷を舐め、心を解きほぐしているのだろう。 祈里が付けた穢れを洗い流すように。 「どうやったの?」 一瞬、意味が解らなかった。 ああ、そうか。せつなは、切っ掛けは話してないんだ。 祈里を悪く言うつもりはない、と言っていたせつなの言葉を思い出した。 確かに、祈里を悪者にせず切っ掛けを話すのは不可能だ。 (お人好しなのかしら。せつなちゃんって。) 庇ってもらっている。情けないけど、そう思える事が嬉しい。 せつなの中にはまだ祈里に対する好意の欠片が残っている。 それがラブを傷付けない為のものであったとしても。 頑ななまでに言った事は守ろうとしているせつなが何だかいじらしかった。 ラブはせつなを変わらず愛している。 せつなが言いたくない事を無理に聞き出したりはしなかったのだろう。 せつなもそんなラブに甘え、今はただ安らぐ事に決めたのかも知れない。 自分が何をしてもラブとせつなは壊れなかった。 嫉妬しつつも、その事に心底ホッとしている自分が不思議だった。 「聞いてないのね。」 黙り込んだままの祈里にラブが焦れそうになっている所に、やっと祈里が生返事以外の 言葉を口にした。 「せつなが言うと思う?」 「聞けば、答えてくれるんじゃない?」 「カッコつけて、言わなくて良いって言っちゃったんだもん。」 「でも、知りたいんだ。気になるの?」 当たり前でしょ? ラブが淡々と答える。祈里が無理矢理に関係を持った事には確信を 持っているのだろう。 実際、その通りなのだし。 せつなが自分からラブ以外に体を許すはずがない。そう信じて疑わない様子が 祈里を惨めな気分にさせる。 最初から相手にされてない。道化にすらなれない。 「今さら気になるの?もう、返したんだからいいじゃない。」 投げ遣りな、開き直った口調。さぞ滑稽に見える事だろう。 盗んだ玩具を扱いきれず、乱暴にいじくり回した挙げ句に壊し、 無くしてしまった。今の自分はそんな所だろうか。 「貸した覚えなんて、ないけどね。それに、」 それに、せつなはモノじゃないよ。 言葉を荒げるでも、詰るでもないラブ。 静かな分だけ、その怒りの深さが知れる気がした。 「気が、狂いそうだったよ。」 前を見詰めたまま、微かにラブの声が揺れる。 「ううん、完全におかしくなってたよ…あたし。 ………見たでしょ?せつなのカラダ。」 せつなの体。白い肌に散る赤い花びら。日に日にその数を増やしていった……。 「せつなに酷い事したの、あたしも一緒だよ。」 「おあいこなんて言うつもりは無いけどね。」 ラブの、感情を表に現さない喋り方。ラブがこんな口調で話すのを 祈里は聞いた事がなかった。 「………お酒、使ったの。」 「……?」 祈里は一から説明する。 せつなが部屋にやってきた時の様子から、意識を失い、祈里に蹂躙されるまでを。 酔い潰れるくらいの強いアルコール入りのデザート。 手作りの物なら、せつなは気を使って残す事はしないだろう。 それを見越して罠に嵌めた。 せつなが目覚めた時には、すべてが終わっているように。 「………よく考えるもんだね。」 呆れた、と思ってるのだろうか。ラブが溜め息をつく。 その後の事は言わなくても分かるだろう。 「どうして、放っておいたの?」 望まぬ関係をせつなが強要されているのが分かっていながら、 なぜラブは取り返そうとしなかったのだろう。 まるで、せつなを挟んで競うようにサインを送って来たり。 あの体を見ればラブも苛むようにせつなを抱いていた事は想像がつく。 せつなにあれほど愛されていながら、こんな事になるまで 何もしなかったラブが、今さらながら祈里には理解出来なかった。 「人が何考えてるかなんて、分かんないもんだね……。ブッキー、勘違いしてるよ。」 苦笑いするラブ。 「刷り込み……って言うんだっけ?こう言うの、ブッキーは詳しいよね。」 刷り込み……、卵から孵った雛は、最初に見たものを親だと思い込む。 例えそれが、親鳥でなくても。 ただの玩具や、自分を呑み込もうとする天敵であっても。 ラブは、せつなと自分の関係はそうだと言っているのだろうか。 「ズルかったんだよ。あたし以外、見せないようにしてたからね。」 せつなに選択肢を与えなかった。 ラブの他にも、せつなを大切に出来る人間がいる。 その可能性を、敢えて排除した。 せつなが何も持たないうちに、その手を、心をラブで埋めてしまう。 後で色々選べる事が分かったって、もう遅い。 他の何かを選びたいなら、今持っているものは捨てなければならないから。 そして、せつなはラブから貰ったものは一つだって捨てられない。 「ブッキーがせつなを好きって気付いた時ね。あたし真っ先になんて考えたと思う?」 間に合った。 「間に合ったって……。そう、思ったんだ。」 もう、せつなを抱いた後だったから。 せつなも、それを当たり前の事として受け入れてくれてたから。 今さら、祈里の気持ちを知ったところで靡いたりしない。 祈里だって、それが分かってたら手出しなんて出来ないだろう。 「まぁ、あんま関係なかったみたいだね。こんな事になっちゃってさ。」 体の関係になってる事を祈里にちらつかせる。それが、却って祈里を暴走させた。 もし、もっとゆっくりせつなと恋人になって行けてたら。 ゆっくり、関係を深め、周りからも納得してもらえるくらい。 せつなには、ラブが必要なんだって思って貰えてたなら……。 「さっきと言ってる事が違うじゃない。 せつなちゃんは、モノじゃないんでしょ?」 無理矢理、せつなを自分のモノにした。 せつなが何も持っていないのをいい事に。 誰よりも近くにいたから、ラブにはそれが出来た。 ラブはそう言っている。 「だから、怖かったんだってば。せつな、ひょっとして、 それに気付いて他の人のとこに行きたくなっちゃったんじゃないか、とかさ。」 「……せつなちゃん、それ聞いたら怒ると思うよ?」 「だろうねぇ。」 「……信じられないよ。せつなちゃん、あんなにラブちゃんが好きなのに。」 「だから……、自信無かったんだよ。」 「……信じられない。」 せつながどんな思いで祈里に抱かれ続けてきたか。 祈里に汚された体を、どんな気持ちでまたラブに差し出したのか。 そして、それを断ち切るのに、どれほど血を流したか。 当のラブは、ただいじけて竦んでいたと言うのか。 (……まぁ、わたしが腹立てる立場じゃないんだけど。原因なんだし。) 勝手なものだな、と思う。 自分が原因で二人を傷付け、すれ違わせておきながら、せつなの気持ちを 受け止め切れてなかったラブに腹が立つ。 ラブが問答無用でせつなを奪い返せば、倒れるまでボロボロにはならなかったのに。 「だからね、やり直そうと思って。」 あたし、だからばっかいってるね。 ラブの穏やかに響く声。 嵐の後に訪れる、静かな凪いだ世界。 ラブの中で吹き荒れていた嵐は、終息を迎えたのだろうか。 「もう一度、ちゃんとね。せつなと手を繋ぐの。」 「………元通りに、なれると思ってるの?」 「元通りじゃなくたっていいよ。」 失敗したなら、やり直せばいい。 やり直そうとする事と、元通りになる事は別。 前と違ったって、構わないじゃないか。 「わたし、取り返しのつかない事だってあるって思うよ。」 「誰が決めたの?そんな事。」 「……誰って…」 「いいんじゃない?やり直せるかは別として。やり直そうとするのは勝手でしょ?」 ラブは祈里を見ない。ただ、真っ直ぐ前を見詰めている。 「だってね、あたし知ってるんだ。」 自分の命が今日、尽きてしまう。 それを分かっていながら、前を向いて歩きだそうとした人。 剥き出しの気持ちをさらけ出し、本当の自分を見せてくれた。 命が消える、その瞬間まで、決して逃げ出さずに。 幸せの素を見つけ、それを摘みとろうとしてくれた。 自分を変えるのに、遅すぎる事なんてない。 「あたしね、大好きなんだ。その人の事。」 ラブの目はキラキラと輝き、その頬は誇らし気に紅潮している。 「大好きなだけじゃなくってね。尊敬してるの。」 胸を張り、ラブは言う。 「あたし、せつなを逃がさないように頑じ絡めにしてたつもりだった。 でもね、ホントは違ってたよ。」 捕まったのはあたしの方。 命懸けでせつなはあたしを選んでくれてた。 せつなは、自分の最後の一日をあたしに会うために使ってくれた。 そんな人から、逃げられるわけないよね。 あたし、馬鹿だから。ほんっと馬鹿だからさ。 切羽詰まるまで気付かないんだよね。 「……わたしには、無理よ。」 やり直せるなんて思えない。 ラブの言葉は死刑宣告にしか聞こえない。 何もかも、意味なんてなかった。最初から、入り込む隙間なんて無かった。 分かってたけど。 一時でも、体だけでも手に入れられた。 せつなの体には消えない祈里との記憶が残る。それで、満足しようと思ってた。 でもラブにとっては、そんなものには何の価値も無いのだろうか。 祈里が必死にしがみついている、せつなと共有した熱の記憶。 せつなの心に残るだろう小さな破片。 「ブッキーの好きにすればいい。」 素っ気ない、ラブの声。 「立ち止まって、何もせずに泣いていたいなら、それもアリでしょ。」 突き放すような、抑えた声。 「でもね、あたしは、待たないから。先に行くよ。」 せつなと一緒にね。 立ち止まった祈里を振り向く事なく、ラブは歩調を速めて行った。 手を差しのべる気は無い。 こちらへ来たいなら、自分で歩いてくればいい。 謝罪も後悔も、祈里が自分で決める事。 ラブの強い背中は、祈里の張りぼての強がりなどには揺るがない。 振り向いてもらえるのは祈里が自ら前に立った時だけだろう。 足が震える。後は自分が決めるだけ。 ラブも、せつなも決めたように。 元に戻る事は決して無い。それだけは、分かっている。 でも、祈里のすべき事。謝罪、後悔、償い。 どれか、すべてか、それともどれでもないのか。 祈里に分かっている事。 それは、ラブはもう許してくれていると言う事。 そして、それにすがる事は祈里自身が許せないと言う事。 黒ブキ23へ
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/62.html
(……起きなきゃ…。) せつなは時計に目をやり、のろのろと身をおこす。 頭が重いのも、体がだるいのも既に当たり前になっている。 疲労と睡眠不足、何より毎日神経を磨り減らし精神的に疲弊しきっていた。 今日も一日、笑顔で過ごさなければいけない。 今のせつなには、それは途方もない苦行に思えた。 あの日以来、祈里から時々来るメール。件名も何もない、『来て』ただそれだけ。 その場で削除する。そして、アカルンで移動する。直接、祈里の部屋へ。 遊びに行くわけじゃない。だから玄関も通らず、お母さんに挨拶もしない。 祈里は相変わらすニコニコと穏やかに微笑んでる。 私は…黙って制服のボタンを外し、下着を脱ぐ。 言われるがままに体を開き、事が済めば、また黙って衣服を整えて部屋を後にする。 (もう嫌、……もう、許して…) せつなの懇願を祈里は天使のような微笑みで黙殺する。 言葉で、体で、せつなを責め苛む。まるで、せつなを嘲笑うかのように。 『せつなちゃんが悪いんだからね。』 『せつなちゃん、ラブちゃんにもこんなふうにしてるの?』 『ねぇ、教えて。夕べはどんな事したの?』 そして、必ずせつなにこう言わせる。 好きよ…祈里 わたしも、せつなちゃん……そう言って祈里は私を掻き抱く。 祈里は、虚しくないのだろうか。私が好きなのはラブだけなのに。 その言葉を口にする度にラブを裏切っている事を 思い知らされる。 祈里はそれを分かってて、わざと言わせてるんだろうか……。 祈里は私が好きだと言う。 それなのに、なぜ私が苦しくなる事ばかりするんだろう。 そして夜が来る、また、ラブに抱かれる。 この頃ラブは毎晩せつなを求めてくる。それも飽くことなく、何度も。 昨夜も明け方まで眠らせて貰えなかった。 ラブは、何か気付いている。何処までかは分からないけれど。 せつなの体をまさぐりながら、その瞳が時々何かを観察するような光を帯びる。 そう、せつなにラブ以外の痕跡が残っていないかどうか。 愛撫も以前の慈しむような優しさが減った。 まるでせつながどこまで耐えられるか試すように、敏感な部分にわざと 歯や爪を立て、乱暴につねる。 既に達しているせつなの体をお構い無しに休む間もなく弄ぶ。 それでも、せつなはラブを拒めない。 それでも、ラブに触れられるのが嬉しいと感じる。 だって体を重ねていれば、まだ愛されている気がするから。 まだ嫌われていない。まだラブの側にいてもいいんだ、そう思えるから。 「…好き、…ラブ」 眠っているラブに体を擦りよせ、そっと囁く。 今は、ラブの目を見られなくなってしまった。 ラブが好き。ラブだけが好き。そのはずなのに、体は与えられる刺激を無視出来ない。 意志とは関係なく、体は祈里の愛撫に応えてしまう。 指で唇で敏感な部分を責められると、噛み殺す事の出来ない嬌声が漏れる。 ラブじゃないのに……。 自分がとても汚らわしいものに成り下がってしまったような気がする。 ラブだけのものじゃ無くなってしまった。 もう、ラブに愛してもらう資格なんかない。 そう思うのに……。 離れられない。この温もりを失うのが怖い。 そして、ラブがどんな気持ちで自分を抱いているのか…。 ラブは気付いてる。なのに何も言わない。 責めることも、問い質すこともしない。 皆の前では変わらぬ態度。朗らかに笑い掛け、冗談を言う。 そして、二人きりになると黙ってせつなの体を貪る。 せつなには、わからなかった。 ラブの気持ちも。祈里の気持ちも。 (せつなって隠し事出来ないんだな。) 祈里の家で具合が悪くなり、そのまま泊まる事になった翌日。 せつなは傍目にも分かるほど蒼白い生気のない顔で帰ってきた。 お母さん、慌てて着替えさせてベッドに入らせてた。 せつながあんなふうに具合が悪くなるなんて家に来て初めてだったから。 薬は?病院行く?世話をやくお母さんを見て、祈里の家に泊まるって聞いて 何だかモヤモヤしてた自分が恥ずかしくなった。 ちょっと嫌な予感がしてたんだよね。 でも本当に辛そうな顔で横たわってるせつなを見たら、祈里にも申し訳なく思った。 心配して泊めてくれたのに、変なヤキモチ焼いちゃったって。 結局、その時感じた嫌な予感はあたってたんだけど。 その日からせつな、明らかに態度がおかしくなった。 家族皆でいる時や学校で友達とお喋りしてる時のせつなはいつもと変わりなく見える。 でも二人きりになると、あからさまに目も合わせようとしない。 それ以前に極力二人きりにならないようにしてるみたいだ。 そしてそれ以上に、祈里に対する態度が不自然過ぎた。 祈里を見ると表情が固くなる。絶対に隣に座らない。 傍目には普通に話しているようにも見えた。でもそれは祈里が一方的に話し掛け、 せつなが返事をしてるだけだった。 あれでは『祈里と何かありました』と言ってるようなものだ。 その『何か』を考えようとすると、いつも途中で思考が止まる。 だって、どんな道筋を辿っても行き着く場所は一つしかなかったから。 (せつながブッキーと……) 古典的な手段だな…と思いつつ、ラブはせつなのいない隙に携帯に手を伸ばす。 今までは恋人のメールを盗み見る、なんて話は軽蔑してた。 (コソコソせずに話し合えはいいじゃん!) こっそり覗くなんて相手を信頼してない証拠。そんなだから不安になるんだよ! 実際に友達との恋愛話のなかでそんな事を言ったような気もする。 それが、実際はどうだ。自分を嘲笑いたくなる。 (………ビンゴぉ!ってやつ?) 几帳面なせつならしく、メールはきちんと名前別にフォルダに振り分けられている。 ラブ、美希、他にも学校の友達や家族。どれも他愛ない雑談や連絡事項。 そして、祈里。直接的なメールは何もない。 むしろ、不自然な程に何もないのだ。 メールはあの日を境に今日までぷっつりと途絶えている。 恐らくせつなが帰った直後に送られたであろう、 『昨日はありがとう。またね。』 これも、少しおかしい。せつなは体調を崩してたはずなのに、それを気遣う 様子は微塵も見られない。着信、発信もゼロ。 そして、今日の午後に一件だけ。 『来て』 ただ、それだけ。 ドクン…と心臓が脈打つ。メールの来た時間。せつなはその直後にいなくなってる。 そして、まだ帰らない。 せつなは今、祈里といる。予感ではなく確信。心に冷たい水が染み込んでくる。 祈里がいつもせつなを見てた事は分かってた。憧れるような、熱っぽい視線。 あたしに対しては嫉妬と羨望の混じった視線。 あたしは…祈里に優越感を抱いていたのかもしれない。 (仕方ないじゃない。せつなは、あたしが好きなんだもん。) せつなは今までに会ったどんな子とも違う。そんなせつなに甘い憧れを 抱くのも仕方ない。 いずれ時間が解決してくれる。だってせつなだって祈里が大好きなんだから。 ただし、友達として。 せつなは今何してるの?今まで、あたしといない時間何してたの? 焦燥感に身が焼かれる。今すぐせつなを問い詰めたい衝動に駆られる。 けど、実際にせつなを目の前にしたら、何も言えないだろう。 せつなが、あたしの目を見られないように。 あたしはせつなに何も言わない。せつなもあたしに何も言わない。 ただ、体を重ねる。焦燥感を忘れようとするかのように。 せつなは何も言わない。拒む事も、抵抗もしない。あたしが何をしても。 時々、せつなは物言いたげな視線をよこす。 でも視線が絡む直前、自分から目をそらす。 たぶん、せつなはあたしからの言葉を待ってる。 『何があったの?』 そう聞けばせつなは話してくれるだろう。せつなは、あたしに嘘はつけない。 組み敷いたせつなの体が熱い。この熱だけが心を引っ掻く焦燥感を忘れさせてくれる。 まだ大丈夫。せつなはあたしを求めてくれてる。 まだ、愛してくれてる。そう思えるから、何度も何度もせつなを求める。 時間が深夜を過ぎても。せつなの体が、とうに限界を迎えてるのが分かってても。 うとうとと微睡みながら、せつながあたしの髪を撫でているのを感じた。 この上なく大切なものに触れてるような、愛しむような優しい指。 こんなふうに、せつなからあたしに触れて来るのは久しぶりのはず。 意識ははっきりしてきたけど、目が開けられない。起きてる事が分かったら、 もう撫でて貰えない気がして。 「…好き、…ラブ…」 吐息のような囁く声。でもはっきりと耳に届いた。 あたしを起こさないようにか、そっと身を寄せぴったりとくっついてくる。 以前と変わらぬ優しい温もり。 (ホントに…?…せつな) 好き、確かに彼女はそう言った。 涙が出そうになる。 (信じても、いいよね……?) せつなはあたしが好き。あたしだけが好き。 あたしがせつなを好きなのと同じように。 ちゃんと、信じよう。逃げるのはやめよう。信じなきゃ、ダメだ。 (あたしは、覚悟を決めなきゃならない。) せつなの寝息を感じながら、そう、思った。 黒ブキ13へ続く
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/685.html
『クローバーの二月』/夏希 ◆JIBDaXNP.g 【二月ってどんなことをするの?】 ラブ 「急にどうしたの? せつな」 せつな「私って、一昨年の今頃はイースだったし、昨年はラビリンスに帰ってたでしょ?」 美希 「そっか、せつなとしてはこの街で初めて迎える月度なのね」 祈里 「二月の代表的な季節行事なら、三日の節分と、十四日のバレンタインよ」 【節分】 ラブ 「でも、節分は終わっちゃったね」 せつな「おとうさんやおかあさんと豆まきしたわね。楽しかったわ」 美希 「懐かしいわね。アタシのところは、今はもうやってないわ」 祈里 「わたしの家もよ。動物さん達に豆をご馳走したくらいかな」 ラブ 「え~っ! 楽しいのにやめちゃうのもったいないよ。特に今年はせつながねー」 せつな「ちょっと、ラブ! それは言わない約束でしょ?」 ラブ 「いいじゃない。せつなったら、歳の数だけ豆を食べるってのを真に受けちゃって、真剣な表情でお父さんとお母さんに大量の豆を差し出すの」 美希 「その光景は想像できるわ。拒めなかったおばさんとおじさんが、必死になって食べたわけね」 祈里 「思い浮かべるだけで楽しそう」 せつな「もう……」 【バレンタイン】 ラブ 「次はバレンタインだね。せつなはあげたい人いるの?」 せつな「異性なら、やっぱりおとうさんね。後は、お世話になってるパン屋のおじさんとか、お蕎麦屋のお兄さんかしら?」 美希 「それは義理チョコでしょ? 本命の男性に渡してこそバレンタインの醍醐味よ」 祈里 「そういう美希ちゃんは、誰にあげるの?」 美希 「アタシは、やっぱり和希かしら?」 ラブ 「美希たんも他人のこと言えないじゃない……」 祈里 「せつなちゃんなら、ウエスターさんとかは?」 せつな「よしてよ。『チョコでホホエミーナ作れば食べ放題!』とか言ってるバカなのよ」 祈里 「じゃ、サウラーさんは?」 せつな「一応、聞いてみたけど、『もう甘いものなんて見たくもないよ』って言ってたわ」 ラブ 「あはは……」 美希 「この世界の食べ物に、壮大な誤解がありそうね……」 【雪】 美希 「あっ、雪が降ってきたわ!」 ラブ 「わは~、ホントだ。雪合戦とか出来ないかな?」 祈里 「ラブちゃん気が早い。まだ降り始めたばかりよ」 せつな「だけど、綺麗……。降り始めの雪は、ほんとうに空を“舞う”のね」 美希 「ラビリンスに雪はないの?」 せつな「自然には降らないわ。もう、色々とおかしくなってるから。でも、人口降雪機による散布は試しているの」 ラブ 「へぇ~、この世界でも、スキー場なんかではよく使ってるよね」 祈里 「ラビリンスの科学力なら、一台で世界中に降らせることも出来そう」 せつな「それは可能なんだけど、私たち三人の間で意見が割れていて……」 美希 「どういうこと?」 せつな「チラチラ降る程度にして目で楽しむだけにするのか、たくさん降らせて雪遊びをするのか」 祈里 「それは……ウエスターさんとサウラーさんで揉めそうな話題ね」 ラブ 「どうせなら、いっぱい降った方が楽しいじゃない!」 せつな「そうだけど、生活や仕事の妨げにもなるわ」 美希 「場所によって降雪量を変えることもできるんじゃない?」 せつな「もちろんできるけど、それでいいのかって気がして……」 ラブ 「どうして?」 せつな「雪は適度に降れば楽しいけど、過度に降れば災害にもなるわ。でも、それをコントロールできないこの世界が、ラビリンスより不幸だとは思えない」 美希 「せつなは、ラビリンスに大自然の営みを復活させたいのね?」 せつな「わからないの。今は、この世界の良い所しか見えてないのかもしれないし……」 ラブ 「あたしに難しい問題の答えは出せないけれど、一緒に考えていこうよ」 祈里 「そうだ! せつなちゃん、みんなも、これから家に来ない?」 せつな「ブッキーの家に?」 せつな「お邪魔します」 ラブ 「ブッキーの部屋なんて久しぶりー」 美希 「見せたいのは……その顕微鏡?」 祈里 「そうなの。これを見て」 せつな「綺麗……。話には聞いていたけど、これが“雪の結晶”なのね」 ラブ 「わぁー、直接見るのは初めて! 氷細工のアクセサリーみたい」 美希 「大自然の神秘ね。これ、一つとして同じ形はないんでしょう?」 祈里 「うん。六角形の雪の結晶の形から雪の花に例えて、“六花”とも呼ばれているの。“天花”と書いて天界の花と神聖視されたり、風に乗って舞う様子から“風花”と呼ばれることもあるわ」 せつな「昔から、この世界では愛されてきたのね」 祈里 「ううん。必ずしもそうでもなくて、雪の災害を起こす“白魔”なんて呼ばれることもあるの。ただ――これだけ綺麗な形をしていることが、偶然だなんてあると思う?」 せつな「雪の結晶が綺麗な形をしているのは、ちゃんと『意味』があるってこと?」 祈里 「そうよ。世の中の全ての物には意味があるって、わたし信じてる。たとえば動物さんの姿が美しいのも、果物が甘くて美味しいのも、生きるためなの。同じように、雪が美しいのにもきっと意味があるはずよ」 せつな「わかったわ、ブッキー。私は……ううん。私たちはその意味を考えて、見つけていかなければならないのね」 ラブ 「そうだよ、幸せはみんなでゲットしなきゃ!」 美希 「せつなは一人じゃない。アタシたちもついてるわ!」 祈里 「みんな外を見て! 本格的に降り始めたわ。明日は童心に返って、雪遊びしようか」 ラ美せ「「「賛成っ!!!」」」 競作11「一六 ◆6/pMjwqUTk」さんによる続編(三次創作)へ
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/248.html
「彼女はそれを我慢できない」/黒ブキ◆lg0Ts41PPY R18 「ふわぁ~……」 「ラブ…、口開きっぱなしよ。」 「スッゴイよねぇ…。」 ポカンと口を開けたままフラフラと蛇行するラブに、 せつなは溜め息を付いて着いて行く。 他の皆はどこへ行ったんだろう? ここは御子柴邸。しかしながら、どこに迷い込んだのか分からない。 今日のラブ達は社会見学の一環でクラスごと御子柴邸の見学に来ているのだ。 社会見学、と行っても大袈裟なモノではない。 各クラス毎、自由に工場やら公共施設やらを見学し、レポートを提出する事に なっているのだが、ラブのクラスは満場一致でクラスの一員である 御子柴グループ御曹司、健人の家を見せてもらう事に決まった。 財閥の私邸、なんて親しい友人でもない一般人は見る機会なんてない。 さほど親しくないクラスメイトでは興味があっても、 遊びに行かせてくれとも言いにくい。 そこで、折角の機会だから、と言うことになったのだ。 御子柴家も心得たもので、こう言った申し出は珍しくもないらしい。 一般客用に見学ルートが設定してあるらしく、家族のプライベートルーム を外して自由に歩き回れるツアーがあるそうだ。 で、前フリが長くなったがラブとせつなである。 プリキュアとして施設を利用 させて貰った事はあるが、 上の御屋敷は初めてだ。 おのぼりさん宜しく、あちこち覗き回っている内に見事に皆とはぐれてしまった。 明らかに見学ルートから外れているらしい。 どうやらスタッフの働く裏方に回ってしまったらしく、ここは洗濯室に なっているのか。 巨大なコインランドリーのように沢山の洗濯機や乾燥機が回っている。 「ねぇ、ラブ。そろそろ戻りましょ。みんな心配してるかも知れないわ。」 「んー、そうだねぇ。お?ここはなんだろ?」 ラブはせつなの言葉を右から左へ聞き流し、あちこちの扉を開けては覗いている。 はぁ、とせつなは再び溜め息を付く。 どうせ、いざとなればアカルンで戻ればいいのだが、どうにも落ち着かない。 見学ツアーと言えど、ルートから外れた場所を勝手にうろついて良いものか。 「ねぇ、見付かったら叱られない?ここ、使用人さん達しか 入れないんじゃないの?」 そう言ってるうちに、ザワザワと複数の人がやって来る気配がした。 「へっ?マジで?」 「ちょ、ちょっと!ラブ!!」 ラブは開けて覗き込んでいた扉の内側へせつなを押し込み、 自分も体を捩じ込んで後ろ手に扉を閉めた。 「な、何?」 「え?だって、叱られるって。」 「だからって隠れなくてもいいでしょ!謝って戻れば良いだけじゃない。」 「……そっか…。それもそうだね。」 もう扉のすぐ向こうまで人が来ているのが感じられる。 「……今さら、こんなとこから出ていったら、変だよ…ね?」 「……そうね……。」 ラブが咄嗟に潜り込んだのは、リネン類が山積みになった棚。 と、言ってもちょっとした部屋くらいの広さに、みっしりと毛布やら シーツやらが重ねて積み上げてある。 ラブとせつなはその隙間に倒れ込むように、重なって挟まっていた。 せつなはラブに押された時に体勢を崩してしまい、毛布の山に もたれるように斜めになっている。 完全に足が浮いてしまい、しかもラブがのし掛かっているものだから 身動きが取れない。 ラブはと言うと後ろ手に扉を閉めたは良いが、勢い余って 突っ込んだものだから上に積んである毛布が雪崩を起こし、結構な重みに 潰されていた。 これまた不安定な姿勢で固まって身動き出来ない。 「……どうするのよ?」 「ミナサン出ていったら、そっと抜け出そ……?」 「…そうしましょう………。」 (しかし、この体勢は………。) 少し冷静になったラブは自分達の体のポジションに少しばかり焦った。 思いっきりせつなの胸に顔を埋めていた。 それだけではない、右手はせつなの足の間に。と言うか、はっきり言って 股間を鷲掴みにしていた。 しかも倒れた拍子にスカートが捲れ上がってしまったらしく、 直接下着の上に。 (……ちょっと…これは……) せつなの胸はポヨンと弾力に富み、クッション性抜群だ。 手の平に当たるアソコもプニプニと柔らかく、とても触り心地が良い。 しかしさすがにこの状況で感触を楽しんでいては、せつなに怒られるだろう。 何とか姿勢を変えようと試みるが、毛布の重みと不安定な姿勢で力が上手く入らない。 しかも外では何か作業が始まったのか、なかなか人の立ち去る気配がない。 どうしたものか、ともぞもぞ動きながら思案していると、 せつなの困ったような囁きが聞こえた。 「……ラブ…、あんまり動かないで……」 その、密着しているラブにさえやっと聞こえる小さな囁きには、 ラブにしか分からない微かな甘さが混じっていて…… ラブはわざとらしく、胸に顔を擦り付け、右手を揉み込む様に指を動かす。 「……ゃ…!」 思った通りの反応に、ラブの胸に少し意地悪な悪戯心が芽生えた。 シャツの上から乳房を甘噛みしてみる。 せつなは胸を上下させ、咎めるように体を捩る。 ラブはそんなせつなを無視してボタンに歯を引っ掛ける。 引っ張ると簡単に外れた。でも一番上は届かない。 真ん中の二つを外して左右に押し広げると、淡いピンクのブラに包まれた 深い谷間が現れる。 「ラブ……!」 「シッ…!外に聞こえるよ。」 ブラの縁をくわえ、グイっと下ろす。 ぷるん、と甘噛みされて既に尖って硬くなった桃色の先端が飛び出す。 「ーーーーっっ!」 ラブは躊躇う事なく大きく口を開けてむしゃぶりついた。 唇でマシュマロのように柔らかな乳房の感触を楽しみ、 舌全体を使ってぷつんと固い果実のような乳首の食感を味わう。 ぶるっ…とせつなの肌が粟立つ。 (なんで、こんなに美味しいんだろ……?) 何の味も付いてないはずななのに。 ラブは甘い果実の種をしゃぶるように、丹念に乳首を舌の上で転がす。 絡め取って吸い、尖らせた舌で乳輪に押し込み、また勃ち上がって来た所を 弾いて遊ぶ。 せつなが息を詰め、声を噛み殺しているのを感じながら、 熱の籠った秘部を指でなぞる。 ふにふにと柔らかな割れ目の間に、下着の上からでも分かる程 硬くしこった突起を見付けた。 そこを爪で引っ掻いてやると、ピクっピクっと内腿が震えた。 せつなはイヤイヤをするように激しく頭を振って、足を閉じようとする。 しかし膝の間にラブの腿が交差するように挟まっているため、 どうやってもラブの愛撫から逃げることは叶わない。 (止まらないや……。) 下着の横から指を潜り込ませると、そこはもう熱く潤んだぬかるみになっていた。 期待通りの感触に嬉しくなったラブは思わず「ふふっ…」 っと小さく笑みをこぼす。 せつなの体温が上昇し、甘く香る体臭がより濃密に鼻をくすぐる。 相変わらず扉一枚隔てた場所に人の気配を感じながらも、 ラブはせつなの体に酔い痴れていった。 不自由な体勢で繰り返す愛撫は、どこか単調でもどかしい。 もっとせつなを狂わせたいのに。 指はせつなの中を掻き回せる程には届かない。 仕方ないので、滲み出た蜜を花弁の一枚一枚に塗り付けるように なぞりあげる。 「…ふっ……ぅん…ん…」 堪えられない切ない吐息を洩らしながら、せつなは腰を揺らめかせる。 羞恥に肌を朱に染めながらも、体はより深い快楽を求めているのだろう。 艶かしく身を捩るせつなの顔が見られないのが、心底残念だった。 (せつな……、イカせてあげるからね…。) ラブはせつなの一番敏感な部分を、たっぷりと蜜を絡めた指で挟み込んだ。 (ダメ!ダメ!…ラブ、ダメよ…!) 下着の中に忍び込んでくるラブの指を感じながら、せつなは必死に首を振る。 胸の先端を執拗に苛められ、下着の上から軽く秘部を擦られる。 それだけで、昇りつめてしまいそうなほど昂ってしまっている。 どうして体はこんなにも快感に従順なんだろう。 抵抗する間も無く、愛撫に屈服している。 そんな自分の体がいっそ呪わしいほどだった。 扉の外では機械の回るモーター音、複数の人の話し声と動き回る気配。 狭い扉の内側は二人分の荒い息遣いと、せつなの体から響く淫らに濡れた水音。 それらが一つの大きなうねりとなり、せつなは耳を犯されてるような 気分になる。 こんな場所で。こんな姿で。 逃げ出したいくらい恥ずかしいのに。 ラブの指先がせつなの形を確めるように、ぬるりと隅々まで這い回る。 いくら足を閉じようとしても、首を振り懇願しても。 胸元でラブが小さく笑い声を洩らすのが聞こえ、せつなは身を震わせる。 せつなの体を知り尽くしたラブには、いくら抵抗しても、 それが形ばかりのものだと言うことはお見通しだろう。 せつなの一番弱い所に、ラブの濡れた指が押し潰すように当てがわれた。 そこは既にズキズキと熱を持って疼いている。 いつものラブはその敏感な突起には、なかなか触れてくれない。 せつなが泣いてねだるまで焦らされる事すらある。 しかし、今は一番感じる部分をピンポイントで攻めてくる。 せつなの胎内で暴れ狂う熱を少しでも早く解き放つ為に。 「……ンぅ……ふっ……ふぅん……ーーっ!」 痛いほどに屹立した突起が左右に揺さぶられるように弾かれた。 指先で柔皮を捲られ、顔を出した肉粒を優しく撫でられる。 もう呼吸すら苦しくなり、声を殺すのも限界が近い。 ゾクッゾクッと足の間で弾ける愉悦が塊となって腰を押し上げる。 快感が嬌声となって解放を求め、喉元にせりあがってくる。 せつなは血の滲むほど唇を噛み締め、辛うじて歯の間で歓喜を押し留めていた。 (ラブっ…!もうダメ…、早く!) これ以上、堪えられない。あられもなく、泣き叫んでしまう。 もう外の気配も異常な状況もせつなの中から消し飛んでしまった。 高みに昇りつめる事しか考えられない。 せつなはラブの背中に爪を立て、シャツを引き裂かんばかりに握り締めた。 ラブはせつなに応えるように、ゆるゆると弄くり回していた突起を強く摘まみ、 しごくように擦り上げた。 「ーーーっくぅっ!……くっ…ぁんんっ!」 待ち焦がれた激しい刺激に、せつなの全身が甘く戦慄く。 瞼の裏が赤く染まり、頭に白い光が弾け飛んだ。 せつなはラブの体を跳ね返すほどに、背を仰け反らせ、強く短い痙攣を 繰り返す。 ラブはせつなの心臓に耳を当てる。マラソンの後のように心拍数が上がっている。 送り出される血が、自分にも流れ込んで来るような錯覚に襲われる。 どのくらい、そうしていただろう。 いつの間にか人の気配は消え去り、ゴトゴトと機械の音だけが聞こえていた。 「はぁあ~…!」 ラブは扉を開け、崩れた布達と共に這い出る。 「……いやぁ、参ったね…。」 恐る恐る、後ろを見る。 せつなはシャツの胸元を握り締め、キュッと腿を 閉じて横座りになり、ラブを睨み付けていた。 「…ははは、その…」 せつなの羞恥に火照った頬。情欲の余韻に濡れた瞳。 そんな顔で睨まれたって、かえってドキドキしちゃうんですが。 しかし、ここはまず謝るところだろう。 「あー……、何と言いますか、その…」 ラブはせつなの前に膝をつき、目を泳がせて詫びの言葉を探る。 「わはっ?!ちょ…?」 せつなはラブを乱暴に引き寄せると、荒々しく唇を重ねて来た。 せつなの舌が歯列を割り、逃げるラブの舌を絡めとる。 (…!せっ…せつなっ!) 思いがけないせつなの行動に、落ち着きかけていたラブの欲望が また暴走しそうになる。 両手でせつなの胸を揉みしだこうとした瞬間… ドンッ!と思い切り突き飛ばされて尻餅を付いた。 「???せつなぁ?」 フンッと腕を組んでラブを見下ろすせつな。 「人の体で好き放題に遊んだんだから、キスくらいしなさいよ!」 「……イヤ…、遊んだとか……」 「違うのっ!?」 いえ、スミマセン。確かに遊んでました。 「もうっ!ほら、さっさと片付けて戻るわよ。みんなきっと探してるわ。」 言うが早いか、崩れた毛布の山を畳み直しに掛かった。 「何ボケッとしてるの!」 一人でやらせる気?睨まれて、慌てて手伝い始める。 (何?その切り替えの早さは…) さっきの肉欲に溺れ、咽び泣いていた色っぽい女の子は幻だったの? そう言いたくなるくらい、せつなはすっかり端正な優等生の顔を取り戻している。 まるで、仮面を付け替えたみたいだ。 「ほら、さっさと行くわよ。」 綺麗に棚にしまい込み、例によってアカルンを出す。 せつなの横顔を見つめながら、ラブはふと気が付く。 長い睫毛に残る湿り気。つい、と髪を手櫛で撫で付ける指先に、 仄かに香る情事の残滓。 「……何?」 「……いやぁ、せつなって色っぽいなぁって思って。」 見る見るうちにせつなの顔は、耳どころか首筋まで赤くなる。 こう言うとこは、すごく素直で可愛いんだよねぇ。 「……今夜はナシだからね…。」 「うぉ?!」 「今日の分はもう済んだでしょ。」 「イヤイヤ!今日の分とか、そう言うもんじゃ……」 「とにかく、もうしないから!」 「せつなぁ~~!!」 プイっと背中を向けて出ていくせつなに、ラブは情けない声を上げて 追い縋る。 そんなラブに見えないように、せつなはクスッと笑みをこぼす。 こんな事を言いながらも、今夜もせつなはベランダの鍵は開けておくだろう。 そして、ラブがやってくれば……… きっとせつなは最後までは拒めない。拒めるわけない。 そしてラブもその事をわかってる。 いつだって、お互いを欲しがってる。 我慢なんて出来ない。 だって、好きなんだもの。 いつだって、求め合いたい。愛し合いたい。 彼女たちは、我慢なんて最初からする気なんてないんだから。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/151.html
『欲望』/黒ブキ◆lg0Ts41PPY 今日はお父さんは残業。お母さんはパートの遅番。タルトとシフォンは ブッキーの所でお泊まり。 そしてせつなは、多分図書館。最近せつなはよく本を読んでる。 こちらの事を勉強中なのだ、と彼女は笑う。新しい事に触れ、知識や経験を 増やして行くことが楽しくて仕方ない様子だ。 せつなが早く馴染んでくれればいい、美希たんやブッキーとも、もっと 仲良くなって欲しい、新しい友達も沢山出来れば嬉しい。 そうすればみんな幸せ。 そう思ってた。本当に、そう思ってたはずなのに。 いつからだろう。せつなが自分以外の人に笑顔を見せると、胸の中にチクチクと 不快感が走るようになったのは。 最初は、「あたし、ヤキモチ焼いちゃってる?らしくないなあ。」なんて、 自分に苦笑いする余裕があった。 でも、そんな嫌な気持ちをハッキリ意識したのはダンス合宿の時。 余り乗り気ではなかったせつなに、自分から「ダンスをする。」と言わせたのは ブッキー。あたしじゃなかった。 あの日、せつなを夕飯に呼びに行ったまま中々帰って来なかったブッキー。 薄暗い窓を見上げながら、ハッキリと苛立っている自分を意識した。 その後、あの時どんなやり取りがあったのか分かっても、一度心に絡み付いた棘は 無くならなかった。それどころか、どんどん増えて行く。 せつなが他の誰かの話をする度に。他の誰かに笑顔を見せる度に。 せつなは親友で家族。そしてプリキュアとして共に戦う仲間。一番近しい所にいるのは自分。 一つ屋根の下に住み、9月からは学校だって一緒。誰が見たって、 これ以上の仲良しなんていないよね? これ以上近くになんてどうやって行ったらいいの? せつなを閉じ込めて、誰にも会わせないで、自分だけのモノに。 そうでもしないとムリだよね。でもそんな事できっこないし。 もしそうしたって満足できるかどうかなんてわからないじゃん。 そこまで考えて初めて気付いてしまった。 ううん、本当はとっくに分かってた。分かってたのに知らんぷりしてた。 だって、どうしようもないもん。 こんな気持ち、せつなは困るに決まってる。でもきっとどんなに困っても せつなは面と向かって拒否できない。 今のせつなは自分が誰かを傷つける事を何より怖れて。 拒否する事であたしを傷つける事を怖れて…… でも、そんなせつなは見たくない。 ガランとした家の中でラブは笑おうとした。 でもそれは苦い泣き笑いにしかならなかった。 (欲張りだな、あたし。) 自分勝手に嫉妬して、自分だけのせつなを欲しがって、そうはならない現実に 苛立って一人ぐるぐる馬鹿な事考えて。 せつなを独り占めしたいのに、自分から言うのはイヤ。 せつなが自ら望んでそうなって欲しい。 ラブは特別。ラブだけが好き。ラブがいれば他に何も要らない。 (そう言って欲しいんだよね。あたしは……) あたしがこんな風に思ってるなんて、せつな、知らないだろうな。 誰も気付いてないよね? だって、必死に隠してきたんだし。 閉め切った部屋は暑くて、じっとりと全身に汗が滲んでくる。 頭の中がぐつぐつと音を立て、やり場のない思いで煮詰まって行く。 (ちょっと頭、冷やそう。みんな帰ってきたら変に思われちゃうよ。) ラブはわざと冷たい水でシャワーを頭から被った。 真夏とは言え、火照った体と冷水のギャップに一瞬悲鳴をあげそうになる。 しかし徐々に冷たさに馴染むにつれ、自分のどろどろした欲望が凍えて 固まって行くようで、芯まで冷えていくのが心地良くさえ感じる。 凍てついたその固まりは決して無くなりはしないのだけれど。 冷たく凍らせておけば溶けて溢れ出る事はないはずだ。 体の感覚が無くなり、震えがきた所でラブは漸くシャワーを止めた。 髪も乾かさずバスタオル一枚でノロノロとリビングに戻る。 「ただいま、ラブ。どしたの?」 いつの間にかせつなが戻り、台所で夕飯の準備をしてた。 「シャワー浴びてたの?今日は暑いもんね。」 屈託無く笑顔を向けてくるせつなに、ラブは顔を上げる事ができない。 「ラブ?」 うつ向いたまま何も言わないラブにせつなは心配そうに近づき、 そっと肩に手を触れる。 (熱い。) せつなの肌の熱さにラブはおののき、震えた。 (ダメだよ、せつな。触っちゃダメ…。溶けちゃうよ、せっかく凍らせたのに……) 「やだ!ラブ冷たい!どうしたの?」 冷えきったラブの体にせつなは驚いて眼を見張る。 「早く服着なきゃ!何か温かい物飲む?」 世話を焼きにかかるせつなの手を、今まで無反応だったラブが不意に掴んだ。 そのままゆっくりとせつなの頬に触れ、輪郭をなぞる。 顎に指を掛け、親指で綺麗な曲線を描く唇を撫でる。 「……ラブ?」 不信気なせつなにラブはゆっくりと微笑みを浮かべる。 「ねぇ、せつな。あたしの事…好き?」 (ごめんね、せつな。あたし、やっぱりもう…ダメかも知れない。) 了
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/344.html
第13話 前を見詰めて 目が、合ってしまった。 それも同時に。もし、一瞬でもタイミングがずれていれば、 先に気付いた方は見なかった事に出来ただろうに。 途方も無く、長い一瞬。先に口を開いたのはラブの方だった。 「……偶然だね。…ブッキー。」 美希と別れた後、気分転換に遠出しようかと電車に乗った。 でも結局、何を見てもどこへ行っても気分が上向く事も無く。 一人の時間を持て余しただけで早々に引き返した。 そんな時だ。同じ電車の改札から出てきたラブに会ってしまったのは。 自分も改札口から出てきたばかりなのだから、これから出掛けるとも言えない。 帰る方向は同じ。必然的に並んで歩くような形になってしまった。 人ひとり、間に挟めるくらいの微妙な距離。 ラブの側の皮膚が服の下でビリビリとざわめいているのが分かる。 朝は、ラブに会う事も覚悟を決めてきたはずだった。 しかし、美希に偽らざる自分の気持ちを吐露し、何とも言えない 粘りついた空気に苛まれた後だ。 まさか不意打ちのようなラブとの接触があるとは夢にも思わなかった。 今の祈里には偽悪的に強がって見せる気力は残っていない。 走って逃げ出したい衝動を抑えるので精一杯だった。 「せつな、大分熱は下がったんだ。」 美希から聞いてない?そう、ラブが話掛けてきた。 「……聞いた。」 「顔色も、良くなってきたし。学校もそろそろ行けそう。」 「………そう……。」 「少し良くなると、すぐに普通に動き回ろうとするから かえって中々熱が下がんなかっんだよねぇ。」 「………ふぅん……。」 「せつなの大丈夫ほど当てになんないものはないんだから。」 ラブも話しながらも祈里の方を見ようとはしない。 それでも、その声は落ち着き払っていて祈里のように 動揺を押し隠している風には感じられなかった。 ラブの口から語られるせつなの様子。 まるで自分の胸にせつなをくるみ込むような、その声。 余裕有り気な態度が祈里の胸の中にチリチリと焼けるような妬心を産む。 祈里は唇を噛み締める。 今だにラブに嫉妬している自分が情けない。 もう十分ではないか、これ以上ラブもせつなも苦しめられない。 ラブとせつなが望むなら、どんな罰でも受けなければいけない。 二人が心置き無く糾弾できるように、いつでも顔を上げていなくては いけないのに。 罪の大きさに比べ、自分はなんと小さいのだろう。 そして……なんと汚らわしいのだろう。 気の無い生返事を繰り返すだけの祈里を気にする風もないラブ。 せつなは、きっとラブの腕の中で傷を癒しているのだろう。 ラブはせつなを抱き締め、その傷を舐め、心を解きほぐしているのだろう。 祈里が付けた穢れを洗い流すように。 「どうやったの?」 一瞬、意味が解らなかった。 ああ、そうか。せつなは、切っ掛けは話してないんだ。 祈里を悪く言うつもりはない、と言っていたせつなの言葉を思い出した。 確かに、祈里を悪者にせず切っ掛けを話すのは不可能だ。 (お人好しなのかしら。せつなちゃんって。) 庇ってもらっている。情けないけど、そう思える事が嬉しい。 せつなの中にはまだ祈里に対する好意の欠片が残っている。 それがラブを傷付けない為のものであったとしても。 頑ななまでに言った事は守ろうとしているせつなが何だかいじらしかった。 ラブはせつなを変わらず愛している。 せつなが言いたくない事を無理に聞き出したりはしなかったのだろう。 せつなもそんなラブに甘え、今はただ安らぐ事に決めたのかも知れない。 自分が何をしてもラブとせつなは壊れなかった。 嫉妬しつつも、その事に心底ホッとしている自分が不思議だった。 「聞いてないのね。」 黙り込んだままの祈里にラブが焦れそうになっている所に、やっと祈里が生返事以外の 言葉を口にした。 「せつなが言うと思う?」 「聞けば、答えてくれるんじゃない?」 「カッコつけて、言わなくて良いって言っちゃったんだもん。」 「でも、知りたいんだ。気になるの?」 当たり前でしょ? ラブが淡々と答える。祈里が無理矢理に関係を持った事には確信を 持っているのだろう。 実際、その通りなのだし。 せつなが自分からラブ以外に体を許すはずがない。そう信じて疑わない様子が 祈里を惨めな気分にさせる。 最初から相手にされてない。道化にすらなれない。 「今さら気になるの?もう、返したんだからいいじゃない。」 投げ遣りな、開き直った口調。さぞ滑稽に見える事だろう。 盗んだ玩具を扱いきれず、乱暴にいじくり回した挙げ句に壊し、 無くしてしまった。今の自分はそんな所だろうか。 「貸した覚えなんて、ないけどね。それに、」 それに、せつなはモノじゃないよ。 言葉を荒げるでも、詰るでもないラブ。 静かな分だけ、その怒りの深さが知れる気がした。 「気が、狂いそうだったよ。」 前を見詰めたまま、微かにラブの声が揺れる。 「ううん、完全におかしくなってたよ…あたし。 ………見たでしょ?せつなのカラダ。」 せつなの体。白い肌に散る赤い花びら。日に日にその数を増やしていった……。 「せつなに酷い事したの、あたしも一緒だよ。」 「おあいこなんて言うつもりは無いけどね。」 ラブの、感情を表に現さない喋り方。ラブがこんな口調で話すのを 祈里は聞いた事がなかった。 「………お酒、使ったの。」 「……?」 祈里は一から説明する。 せつなが部屋にやってきた時の様子から、意識を失い、祈里に蹂躙されるまでを。 酔い潰れるくらいの強いアルコール入りのデザート。 手作りの物なら、せつなは気を使って残す事はしないだろう。 それを見越して罠に嵌めた。 せつなが目覚めた時には、すべてが終わっているように。 「………よく考えるもんだね。」 呆れた、と思ってるのだろうか。ラブが溜め息をつく。 その後の事は言わなくても分かるだろう。 「どうして、放っておいたの?」 望まぬ関係をせつなが強要されているのが分かっていながら、 なぜラブは取り返そうとしなかったのだろう。 まるで、せつなを挟んで競うようにサインを送って来たり。 あの体を見ればラブも苛むようにせつなを抱いていた事は想像がつく。 せつなにあれほど愛されていながら、こんな事になるまで 何もしなかったラブが、今さらながら祈里には理解出来なかった。 「人が何考えてるかなんて、分かんないもんだね……。ブッキー、勘違いしてるよ。」 苦笑いするラブ。 「刷り込み……って言うんだっけ?こう言うの、ブッキーは詳しいよね。」 刷り込み……、卵から孵った雛は、最初に見たものを親だと思い込む。 例えそれが、親鳥でなくても。 ただの玩具や、自分を呑み込もうとする天敵であっても。 ラブは、せつなと自分の関係はそうだと言っているのだろうか。 「ズルかったんだよ。あたし以外、見せないようにしてたからね。」 せつなに選択肢を与えなかった。 ラブの他にも、せつなを大切に出来る人間がいる。 その可能性を、敢えて排除した。 せつなが何も持たないうちに、その手を、心をラブで埋めてしまう。 後で色々選べる事が分かったって、もう遅い。 他の何かを選びたいなら、今持っているものは捨てなければならないから。 そして、せつなはラブから貰ったものは一つだって捨てられない。 「ブッキーがせつなを好きって気付いた時ね。あたし真っ先になんて考えたと思う?」 間に合った。 「間に合ったって……。そう、思ったんだ。」 もう、せつなを抱いた後だったから。 せつなも、それを当たり前の事として受け入れてくれてたから。 今さら、祈里の気持ちを知ったところで靡いたりしない。 祈里だって、それが分かってたら手出しなんて出来ないだろう。 「まぁ、あんま関係なかったみたいだね。こんな事になっちゃってさ。」 体の関係になってる事を祈里にちらつかせる。それが、却って祈里を暴走させた。 もし、もっとゆっくりせつなと恋人になって行けてたら。 ゆっくり、関係を深め、周りからも納得してもらえるくらい。 せつなには、ラブが必要なんだって思って貰えてたなら……。 「さっきと言ってる事が違うじゃない。 せつなちゃんは、モノじゃないんでしょ?」 無理矢理、せつなを自分のモノにした。 せつなが何も持っていないのをいい事に。 誰よりも近くにいたから、ラブにはそれが出来た。 ラブはそう言っている。 「だから、怖かったんだってば。せつな、ひょっとして、 それに気付いて他の人のとこに行きたくなっちゃったんじゃないか、とかさ。」 「……せつなちゃん、それ聞いたら怒ると思うよ?」 「だろうねぇ。」 「……信じられないよ。せつなちゃん、あんなにラブちゃんが好きなのに。」 「だから……、自信無かったんだよ。」 「……信じられない。」 せつながどんな思いで祈里に抱かれ続けてきたか。 祈里に汚された体を、どんな気持ちでまたラブに差し出したのか。 そして、それを断ち切るのに、どれほど血を流したか。 当のラブは、ただいじけて竦んでいたと言うのか。 (……まぁ、わたしが腹立てる立場じゃないんだけど。原因なんだし。) 勝手なものだな、と思う。 自分が原因で二人を傷付け、すれ違わせておきながら、せつなの気持ちを 受け止め切れてなかったラブに腹が立つ。 ラブが問答無用でせつなを奪い返せば、倒れるまでボロボロにはならなかったのに。 「だからね、やり直そうと思って。」 あたし、だからばっかいってるね。 ラブの穏やかに響く声。 嵐の後に訪れる、静かな凪いだ世界。 ラブの中で吹き荒れていた嵐は、終息を迎えたのだろうか。 「もう一度、ちゃんとね。せつなと手を繋ぐの。」 「………元通りに、なれると思ってるの?」 「元通りじゃなくたっていいよ。」 失敗したなら、やり直せばいい。 やり直そうとする事と、元通りになる事は別。 前と違ったって、構わないじゃないか。 「わたし、取り返しのつかない事だってあるって思うよ。」 「誰が決めたの?そんな事。」 「……誰って…」 「いいんじゃない?やり直せるかは別として。やり直そうとするのは勝手でしょ?」 ラブは祈里を見ない。ただ、真っ直ぐ前を見詰めている。 「だってね、あたし知ってるんだ。」 自分の命が今日、尽きてしまう。 それを分かっていながら、前を向いて歩きだそうとした人。 剥き出しの気持ちをさらけ出し、本当の自分を見せてくれた。 命が消える、その瞬間まで、決して逃げ出さずに。 幸せの素を見つけ、それを摘みとろうとしてくれた。 自分を変えるのに、遅すぎる事なんてない。 「あたしね、大好きなんだ。その人の事。」 ラブの目はキラキラと輝き、その頬は誇らし気に紅潮している。 「大好きなだけじゃなくってね。尊敬してるの。」 胸を張り、ラブは言う。 「あたし、せつなを逃がさないように頑じ絡めにしてたつもりだった。 でもね、ホントは違ってたよ。」 捕まったのはあたしの方。 命懸けでせつなはあたしを選んでくれてた。 せつなは、自分の最後の一日をあたしに会うために使ってくれた。 そんな人から、逃げられるわけないよね。 あたし、馬鹿だから。ほんっと馬鹿だからさ。 切羽詰まるまで気付かないんだよね。 「……わたしには、無理よ。」 やり直せるなんて思えない。 ラブの言葉は死刑宣告にしか聞こえない。 何もかも、意味なんてなかった。最初から、入り込む隙間なんて無かった。 分かってたけど。 一時でも、体だけでも手に入れられた。 せつなの体には消えない祈里との記憶が残る。それで、満足しようと思ってた。 でもラブにとっては、そんなものには何の価値も無いのだろうか。 祈里が必死にしがみついている、せつなと共有した熱の記憶。 せつなの心に残るだろう小さな破片。 「ブッキーの好きにすればいい。」 素っ気ない、ラブの声。 「立ち止まって、何もせずに泣いていたいなら、それもアリでしょ。」 突き放すような、抑えた声。 「でもね、あたしは、待たないから。先に行くよ。」 せつなと一緒にね。 立ち止まった祈里を振り向く事なく、ラブは歩調を速めて行った。 手を差しのべる気は無い。 こちらへ来たいなら、自分で歩いてくればいい。 謝罪も後悔も、祈里が自分で決める事。 ラブの強い背中は、祈里の張りぼての強がりなどには揺るがない。 振り向いてもらえるのは祈里が自ら前に立った時だけだろう。 足が震える。後は自分が決めるだけ。 ラブも、せつなも決めたように。 元に戻る事は決して無い。それだけは、分かっている。 でも、祈里のすべき事。謝罪、後悔、償い。 どれか、すべてか、それともどれでもないのか。 祈里に分かっている事。 それは、ラブはもう許してくれていると言う事。 そして、それにすがる事は祈里自身が許せないと言う事。 第14話 初夜(R18)へ続く
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/805.html
『桃園家の一日Ⅰ』/Mitchell Carroll 「じゃあ、お留守番よろしくね、せっちゃん、ラブ」 「行ってらっしゃい、お母さん、お父さん」 「おみやげよろしくねー、お母さん、お父さん!」 土曜日の朝、母のあゆみと父の圭太郎は二人で温泉旅行に出かけた。 帰ってくるのは明日の遅くだという。 「ふっふっふ、せつな……」 「何よ。お風呂の掃除にリビングの掃除、玄関の掃除に廊下の掃除、 それから授業の復習と予習もしないといけないんだから。さっ、洗濯物干さなきゃ」 ベランダに出たせつなは、洗濯物をいきおい良くパンッパンッと鳴らす。 霧が虹色に輝いて、せつなに降りそそぐ。 ラブも隣でいささか歯切れの悪い音を鳴らしながら洗濯物を干す。 普段手の届かない所まで念入りに行われた掃除は、 10時の休憩を挟み、正午には終わった。 「お腹空いたー。せつな、お昼ごはん何?」 「夕べの残りの肉じゃが」 「うっ、ニンジン……せつな、代わりに食べて」 「わがまま言わないの」 「うう~」 「しょうがないわね」 前日の夕食の残りをきれいに平らげ、皿も洗い終わったところで、 せつなはソファに腰掛けて手芸の番組を見ている。 一方、ラブはその隣に座って、友達とメールのやり取りをしている。 せつながメモか何かを取りに行こうとしたのか、腰を上げたその瞬間、ラブはせつなの尻を触った。 「何するのよ」 そのままメモ帳を取り、戻ってくると、 「どうせ触るなら、肩でも揉んで」 と、ラブを躾ける。 後ろにまわったラブは、せつなのしっとりした髪を掻き分け、服越しにそのしなやかな肩に触れる。 視線の先には、柔らかそうな二つのふくらみがあった。だが、 「頼みもしないところまで揉まなくていいからね」 と牽制された。 ――いつの間にか、せつなはスウスウを寝息を立てて眠ってしまった。 ラブも手を止めてせつなの横に座ると、間も無く、肩にせつなの頭がコテンともたれ掛かった。 せつなが目を覚ました頃、時計の針は5時をまわっていた。 「夕食の支度しないと」 「せつな、あれ食べようよ、ラザニア!」 以前スーパーで目に付いて思わず買ってしまった、生地とソースの入った、 途中まで完成しているラザニアを、二人で説明書きとにらめっこしながらなんとか作り上げる。 味や見た目を褒め合いながら、次はああしよう、こうしようと喋りつつも、 お互いの、噛む音、のみ込む音まで、今日はなぜかいつも以上に聴こえてくる。 なかなか上出来のラザニアも堪能したし、授業の復習と予習も済んだ。 「お風呂、入ろっか」 「そうね」 せつなはシャツをするすると脱ぎ、洗濯カゴに放り込むと、 すかさずラブはそれを鷲掴み、顔を埋(うず)め、深呼吸を開始する。 「はあー、今日一日分のせつなのにおい♡」 「ちょっと、やめて」 恥ずかしがるせつなを見つめながら、例の呼吸を続けるラブ。 「ラブ、きらい」 言葉でラブをつねる。 いつもと何かが違う入浴。 毎回ベタベタ触ってくるくせに、どうして今日に限って触ってこないの?と、せつなは不安になっていた。 まさかさっきの言葉を真に受けたのでは、とひとりで気まずい思いをしたままタオルで体を拭っていると、 「きょうは、せつなの部屋に行っていい?」 と、ラブにたずねられた。 「……ええ」 続く 全476へ R18につき閲覧注意
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/253.html
「夜は短く、二人は永久(とわ)に」/黒ブキ◆lg0Ts41PPY R18 頭の中でも血の駆け巡る音が鳴り止まない。 虚ろな視線の先にはまだ肉食獣の獰猛な光を宿したままのラブの瞳。 その瞳に少し笑みを含んだ色を乗せ、せつなに自分の指をかざして見せる。 滴りそうなほど、根元までも濡らしているのはせつなの快楽の証。 じっ…と見つめながらこれ見よがしに口に含み、ピチャリと音を立てて 味わう。 ベッドの下では美希と祈里が静かに寝息を立てている。 それを分かっていながら……。 こんな状況でもラブの愛撫を歓喜を持って受け入れてしまう体。 突き飛ばして逃げる事も出来たはずなのに。 せつなを堕とす為に触れてくる指には昼間のじゃれ合いにはない 粘り付く鎖が仕込まれている。 容赦無く絡み、縛り、縫い付ける。身も心も、既にラブの物だから。 与えられる悦びを拒絶する意思なんて、とうの昔に忘れてしまった。 指に、舌に翻弄され、快感に打ち震えながらも必死に声を殺すせつな。 そんな自分の姿を眺めるのが、ラブに肉体的な快感以上の快感を与えている。 その事をせつなもいつしか理解していた。 乱れれば乱れるほど。そして、それに耐えれば耐えるほど、ラブはより一層 愛してくれる。 堪えるせつなを打ち崩す為に、ありとあらゆる快感の雨を降り注いでくれる。 陥落のすすり泣きを漏らすせつなを満足気に眺めるラブ。 快感に肉体を、そしてそんなラブの様子に心を充足させるせつな。 結局、お互いにやりたいようにやっている結果なのだ。 だから、ラブはせつなが泣いても行為を止める事はない。 せつなもラブが簡単に押さえ込める程度の抵抗しかしない。 美希と祈里は自分達の関係を知っている。 だから、バレたところでどうと言うことはない。 そんな開き直りもスパイスの一つに出来るだろう。 美希と祈里にとっても……。 「……せつな、行くよ。」 軽くパジャマの乱れを整えてやりながら、ラブが囁く。 どこへ?とは聞かない。 二人とも、あれくらいで満足出来ないのは分かりきってるから。 冷えた部屋に滑り込み、ドアを閉める。 せつなはラブにぶつかるように体を預け、唇を求める。 熱く絡まり合う舌を楽しみながら、ラブはするするとせつなのパジャマを 剥ぎ取っていった。 「…んん…ぅ、ラブぅ。酷いわ……あんな……」 「でも、気持ち良かったんでしょ…?」 声を上げる事も許されず、弄ばれた。 抑えきれずに漏らした小さな息。美希達に聞こえなかっただろうか……。 閉じた腿の間で無理やり迎えた絶頂は、中途半端に体に燻り、 未だずくずくと体の奥で媚薬のようにせつなを炙っている。 「すぐに……イキたい?」 耳たぶを甘噛みしながら囁くラブに、せつなは頷くしかない。 どうしようもなく、疼いている。ラブにしか、鎮められない。 やわやわと乳房に指をめり込ませ、ぷくりと充血した桃色の蕾を指に挟み込んで 擦り上げる手のひら。 勃ち上がった乳頭を意地悪く爪弾かれ、せつなの膝からガクガクと力が抜ける。 秘部の奥が膨れ、内側から下腹部を圧迫する。 足の間が度数の高いアルコールを流し込まれた喉のように焼け付く。 「ここに座って……。」 ラブは何故かベッドではなく、勉強机の椅子を引き、せつなを座らせる。 「ーーあっ!こんなの嫌…!」 椅子の肘掛けに両膝を掛けられ、秘部を余す所無くさらけ出される。 信じられないくらい恥ずかしい姿勢を取らされ、せつなの 体温は部屋の空気が暖まるほど上昇する。 恥ずかしい……、でも、せつなは恥辱に震えながらも抵抗しない。 だって、もう知ってしまったから。 これから、どれほどの愉悦をラブが与えてくれるか…。 せつなが恥じらえば恥じらうほど、ラブの愛撫は濃密さを増す。 焦らし、昂らせ、爪の先まで痺れるほどの快感を溢れさせる。 また、恐らくすぐには逝かせて貰えない。 せつなが、あられもなくラブを求めるまで。 「ラブ……、お願い…。本当に、もう……」 「んー?分かってるって。今日はそんなに意地悪しないから……。」 そう言いながらラブは顔をテラテラと濡れ光る箇所に寄せる。 息が掛かりそうなくらい、せつなが少し腰を浮かせれば「口付け」を交わせる距離に。 「……真っ赤だよ…、とろとろになってる…。」 くいっ、と二本の指で秘唇を押し広げる。湧き出る熱い体液。 それを救い取り、粘液の膜をまとった指先でピンと尖り立った肉芽の先を 擽るようにいじくりまわす。 ひくひくと埋める物を欲して蠕動する秘唇に舌をあてがい、望み通りに その中を満たしてやる。 「…あ、あ、あ、あ、ーっあんっ、ンうぅ…、は…ぅくっ、ゃぁ…んっ…」 ラブは舌で内側を、指先で陰核をぬるぬると小刻みに味わう。 剥き出しの神経を舐め回される感覚に、せつなの腰の奥から深い震えが這い出して来る。 椅子から宙に浮いた足はどこにも支えがなく、全身に走る快楽の波を 受け止める力は虚しく拡散し、ただ翻弄されていくしかなかった。 陰核から突き上げるような鋭い性感は一点に集中し過ぎて逝く事も 逃れる事も許してくれない。 膣内からじんわりと滲み出る柔らかな快感はじれったくぬるま湯のように下半身を浸す。 頂点はすぐそこなのに、生殺しのまま皮膚の下を肉欲の魔物に食い荒らされる。 せつなはただ身悶えるしか出来なかった。 「ココ、好き…?」 「あんっ…、ダメぇ…続けてぇ……」 中から舌を引き抜き、顔を寄せてくるラブにせつなは潤みきった声音で ラブの耳を犯してゆく。 情欲に蕩け果てた唇が溢すのは、脳髄を浸食する麻薬だった。 嵌まっちゃったなぁ……… 頭の隅っこで僅かに残っている理性が自嘲気味に苦笑いを漏らす。 けど、あられもなく愛撫をねだる恋人の姿は、そのほんの微かな理性を かなぐり捨てるには充分な痴態だった。 「せつなぁ、イイって言って…。気持ちいいって。こうされるの、好き……?」 「…んあっ。……好き、……イイの…、きもち…い、あっ…らぶっ、はぅ…ンっ…もっ…とぉ…」 陰核を捉えた指を微かに振動させてやると、せつなは熱に浮かされたように 問われるままに求めてくる。 素直に快楽に身を任せるせつなは壊してやりたいくらい愛らしくて。 軽く微笑み、ご褒美の口付けを交わした後、再びせつなの花芯に顔を埋める。 頭の上から途切れた快感の繋がる安堵の混じった艶声が降り注ぐ。 自分でも危いと分かるほど、のめり込んでいる自覚があった。 覚えてしまった肉体の悦びだけではない。 せつなと言う存在そのものに。どうしようもなく溺れていた。 ラブは自分の秘所に手を伸ばす。 せつなを責めながら、自らも彼女の声に、吐息に酔わされていた。 熱を帯びた匂い立つ肌と甘やかな粘膜の味、それらすべてが 見えない手でラブの全身を撫で回す。 蕩けた体内に指を与えてやると、待ち兼ねたように奥に吸い込もうとはしたなく蠢く。 そこはせつなと同じくらい熱く、いつもの自慰とは比べ物にならない快感に 気が遠くなりそうだった。このままではせつなより先に達してしまう。 「んんっ…あんっ…、ら…ぶぅ…あっあっあっ……っ!」 軽く曲げた指の腹でざらついた上壁を舐めてやる。 薄い包皮から膨れた蕾を吸い出し、唇で挟み込んで舌先で捏ねるようになぶる。 せつなの声が一際昂り、涙を孕んで甘く掠れてくる。 「ダメぇ…っ、はっ…あぁぁんっ…あっ、いやぁ、んーー…ッ…あっ、あー…っ!」 ギシギシと壊れそうなほど椅子が軋み、せつなのほんのりと上気した白い腰が跳ねる。 強い痙攣と共にラブの指は肉のうねりに巻き込まれ、せつなの一部になってしまいそうだった。 ラブはせつなの陰核を吸う同じリズムで、自分の蕾を親指で苛める。 せつなが高みに登り詰めるのに一瞬遅れてやってきた、激しい快楽の雪崩。 思わず顔を埋めた柔らかな肉に歯を立てそうになり、慌てて唇を離す。 息を乱しながらも身を起こすと、せつなが崩れるようにしなだれかかってきた。 「………椅子、壊れちゃったらどうするのよ……」 「…て、言うか。気にするとこ、そこ?」 ラブ自身、まだ絶頂の余韻に身体に力が入らない。 何とかせつなを抱き止め、そのままベッドに転がる。 「気持ち良さそうだったねぇ。せつな?」 「……バカ…、知らない…。」 濡れた睫毛を震わせながら強がるせつなの髪に指を絡めながら優しく梳く。 ゴソゴソと体の位置を調節しながらせつなが密着してくる。 ラブの腿に膝を入れ、足を絡める。 するとラブがビクッと震えた。 くちゅっ……と音を立て、ぬるりとせつなの腿に滑る。 素肌が感じたのは、花開くように充血した恥肉の感触と溢れ零れる蜜の滴り。 そのままゆっくりと湿り気を確かめるように膝を上下させると ラブは甘えた声で身を捩る。 「あんっ…ダメだよぅ。せつなってば……」 「……ラブ、……自分でしてたの……?」 私にしながら? 「あは…、えと、そのぅ。つい、ね。我慢できなくってさ…。」 せつながあんまり可愛いから。 テヘへ、と照れ笑いしながら言い訳めいた呟き。しかも理由になってない気がするのだが。 「私がしてあげたかったのに………。」 「…っ!うぉ…?」 軽く唇を尖らせたせつなは、拗ねたように上目遣いに見上げる。 「どして…?私じゃ、イヤ?」 潤んだ瞳。仄かな恨みがましさを刷いた表情は、見つめられると 背筋にぞくぞくと糖分を含んだ痺れが走る。 「そんなわけない。あたしの事、もっと気持ち良くしてくれるの?」 答える代わりにせつなはのし掛かり、自分の愛液に濡れたラブの唇にかぶりつく。 まだ興奮に強張った胸の突起を押し付け、擦る。 どれほど深い絶頂を味わった後でも、若い体と心はすぐに次の熱を欲していた。 求め合い、与え合う相手は既に腕の中に収まっているのだ。 情熱に身を委ねる事に何の躊躇いがあるだろう。 「じゃあ…、今度は一緒に。……ね?」 体を入れ換え、せつなの片足を抱える。 腿の間に滑り込んでく来るラブの意図を察し、せつなは大きく足を開く。 「……で、その次は…せつながしてね…」 「んあぁっ…、無理…かも…んぅぅっ…はぅ…」 「…ふあっ……何で?…まだ行けるでしょ…?」 ゆるゆると腰を回し、じわじわと溶け合って行く。 二人で一緒に逝けたら、またその次はどうしようか……? 多分、今夜は疲れ果てて蕩け落ちるまで貪り合ってしまうだろう。 そして体の奥に火照りの種を宿したまま、朝を迎える。 いつまでも引く事のない熱を分けあったまま。 了 美祈6は、美希ブキside(R18・閲覧注意下さい)
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/73.html
金曜日、せつなは久しぶりに学校に行った。 本当は週明けから登校の予定だったけど、早く行きたいと言う本人の希望。 それに、週末ならもしまた疲れて体調を崩しても土日で休めばいいだろう、 と言うお母さんの判断からだった。 クラスはちょっとした騒ぎだった。 休み時間は色んな子が入れ替わり立ち替わり。 せつなが疲れないかとちょっと心配したけど、嬉しそうにクラスメイトと お喋りしてる様子にホッとしたりも。 生真面目なせつなは、休みの間もちゃんと自習してたみたいで 授業の遅れなんかも問題ないみたい。 「せつなぁ、疲れてない?」 「平気よ。久しぶりにみんなに会えて楽しかった。」 「あんま無理しちゃダメだよー。」 「本当に平気だってば。」 帰り道、まだ少し興奮気味のせつな。 ニコニコと楽しげな笑顔にこっちも嬉しくなる。 また、こんな風に笑い合えるようになれた。 そして他愛のないお喋りに興じながらも、あたしの心はつい別の欲求が……。 (………もう、そろそろいいんじゃないかな……?) 学校に行き始めた。と、言う事はせつなは体調面ではほぼ回復したって事で。 体調が戻った、と言う事は、つまり…… (………もうそろそろ、ね……?) 夕飯時、今日一日の事を話しながらの団欒。 お父さんもお母さんも、すっかり元気を取り戻したせつなに安心したみたい。 弾む会話を耳の端で捕らえながらも 、あたしは気もそぞろ。 何度か頓珍漢な受け答えをしてしまったらしく、お母さんやせつなに 妙な顔をされてしまった。 (さて……、どうするか。) 夜、バスタイムも済ませ後は寝るだけ。 せつなが倒れて以来、せつなに添い寝するのが習慣になっていた。 腕枕したり、おでこにお休みのキスをしたり。 腕の中で安らかな寝息を立てるせつなを見て、自分も幸せな気分に浸れた。 (エッチするのが、すべてじゃないよね。) 安心しきったせつなの寝顔を眺めながら、今までの自分を反省した。 無理に体を繋がなくたって心が繋がっていれば、こんなにも満たされる。 でもまぁ、そんな清らかな気持ちは続くもんじゃないね………。 だって、大好きな人が腕の中にいるんだもん。 甘い髪の匂い。ぴったり密着した柔らかい体。至近距離で誘うように 少し開いた、ふっくらした唇。時々、寝言で「ラブぅ~……」なんて囁かれて、 ギュッと抱きつかれたりなんかして。 正直、何度理性が振り切られそうになったか……。 なまじ、ぴったりくっついてるもんだから一人で、その…ね? いろいろイタして欲求不満を解消するワケにもいかず。 (そろそろ解禁……してもいいと思うんだよ。) 高鳴る胸を鎮めながら、ベランダからせつなの部屋へ。 せつなはラブの姿を認めると、微笑んでベッドを半分空けて待っている。 ラブが滑り込むと、せつなは嬉しそうに身を擦り寄せて来る。 (……ちょっと、がっつき過ぎかなぁ。) 無邪気な笑顔のせつなを抱き締めながら、ラブはちょっと反省する。 学校に行き始めた、その日の晩から待ってましたとばかりに、 手を出すのは……。 さすがにお行儀が悪いだろうか。 いやいや、でも十分お利口さんに我慢してたんだし。 あー……、でもなぁ。 「ねぇ……、ラブ?」 悶々と考え込んでいるラブを不信に思ったのか、せつなが上目遣いに ラブを覗き込んでいた。 「あぁ…、ゴメン、何?」 「あのね、……私、今日学校に行ったでしょ?」 「うん、そだね。疲れなかった?」 「うん。それで、その……もう、元気だと思うの、私。 ………だから、……その…」 「……?!」 俯き、目を伏せてもじもじするせつな。その顔は薄暗い部屋でも はっきり分かるくらい赤くなっていて…。 (これって……。これってもしかして……!) 「………して…、欲しいな……。」 ボンっ!と音が聞こえるくらいに頭に血が昇った。 今のあたしの顔はせつなも比べ物にならないくらい真っ赤っ赤のはずだ。 今までの数え切れないくらい抱き合って来たけど、せつなの方から こんな事を言ってきたのは初めてだ。 「…あの、嫌ならいいんだけど……。」 「イヤイヤイヤ!まさかまさか!」 あれ?ちょっと、せつな。何か涙ぐんでない? 「え?ちょっ!何で泣いてんの?」 「……だって、嫌なのかなぁって……。」 「ちょっと待ってよ。何でそうなるの?嫌なワケないでしょ!」 「……ずっと、キスも……してくれなかったし。」 ………脱力した。何でそうなるかな。 あのねぇ、せつな。出来るワケないでしょ。 キスなんかしたら我慢できなくなっちゃうに決まってる。 何のための禁欲生活なんだか。 あたしは、はあっ…と溜め息をついてせつなに覆い被さった。 「…ラ、ラブ?」 あたしがせつなの胸に顔を埋めると、せつながおずおずと頭を撫でてくる。 「もう、何のための我慢なんだか。せつなが寂しい思いしてたなら、 意味ないよ。」 あたしは顔を上げて、せつなの頬を両手で挟む。 「ずっと我慢してたの。ずっと、せつなに触りたくて仕方なかったんだよ?」 せつなが何か言いかけたのを、人差し指で止める。 何を言おうとしたか分かったから。 「ごめんなさい、は無しだよ。」 せつなが困ったように苦笑する。やっぱり、謝ろうとしてたんだ。 「だから、これからはちゃんと話そうね。」 悪い癖だ。相手の気持ちを確かめもしないまま、落ち込んだり傷付いたり。 言葉も気持ちも、出し惜しみして良いことなんてないのにね。 「……分かったわ。」 潤んだ瞳のまま、ようやくちょっと微笑んでくれた。 堪らなく、愛しい。 二度と、辛い思いなんてさせたくない。 「………抱くよ?」 パジャマの上から柔らかな膨らみをなぞる。 久しぶりに手のひらで感じる、せつなの乳房。 布越しに乳首を引っ掻くと、はあっ…とせつなが息の塊を吐き出す。 せつなはラブの首を抱き寄せ、キスを求める。 唇が触れ合った瞬間、ラブの中で今まで辛うじて押し留めてあった欲望が弾け、 溢れ出した。 (ああ……、ダメだ。ゴメン、せつな…) 吐息まで絡め取ろうとラブの舌が、せつなの舌を逃がすまいと追いかける。 パジャマのボタンを外すのももどかしく、思い切りに左右に引っ張る。 ボタンが幾つか弾け飛んだ。 下着ごとズボンを引き下ろし、足を開かせ、その間に自分の体を割り込ませる。 指の跡が付くほど強く乳房を揉みしだく。痛みにせつなが眉を寄せ、呻く。 外気に晒され、尖った乳首を人差し指で弾き、さらに硬くなったところを 摘まんで捻る。 「…!!やっ…!はぁあああ…!はっ…あ…」 思い切り開かせた腿の間に顔を埋め、濡れ始めた部分に吸い付く。 秘唇を抉じ開け、舌を捩じ込むとせつなは声にならない泣き声を上げ、 弓なりに背を反らした。 「はぁっ…、はあっ…、はあっ…あっ、あっ………あぁぁ!!」 舌で解した肉の入り口に指を沈めて行く。内壁の粘膜が指を包み込み、 奥へ誘うように蠢く。 痛々しいほどに赤く充血した蕾を硬く尖らせた舌先でくすぐると、 舌が触れる度にせつなの腰がびくびくと小刻みに跳ねた。 頭の上で、はっ、はっ、はっとせつなが細かく息を付くのが聞こえる。 矢継ぎ早な強い刺激に声をあげる事もできなくなっているのだろう。 限界まで膨れた蕾を強弱を付けて吸い、指で中を深く抉る。 「ーーー!!くぅっ…!んっ、んっ!」 せつなが体を硬直させ、ピンと伸ばした足先がきゅっと丸まる。 硬くシーツを掴んでいた手を開かせ、ラブは自分の指を絡ませる。 「……せつな………。」 虚ろな目で息を弾ませているせつなを、そっと抱き締める。 背中にせつなの腕が回されるのを感じる。 どうして、こんな風にしか出来ないんだろう。 優しく、するつもりだった。お姫様に傅くように。宝物を扱うように。 優しく、優しく綿毛のように愛撫して。 痛い思いも、苦しい思いもさせず、ただせつなが気持ちよくなれるように。 それなのに、せつなを欲しがる心を体が制御できない。 容赦のない、性急な愛撫。攻め立てるように貪る事しか出来なかった。 「ゴメン、……せつな…。」 「どして?……どして、謝るの?」 私、嬉しかったのに。 我を忘れて、ラブが求めてくれてる。自分を抑えられないくらいに。 「ラブ……優しかったわよ?」 「……そんなワケないよ…。」 「ホントに。……すごく、大切に抱いてくれた……。」 違うの? 悲しくなるくらい、綺麗なせつなの笑顔。 どうして、せつなはこんなにも綺麗でいられるんだろう。 幾つもの闇を潜り抜けて来たせつな。その度に、曇りが研がれ、 複雑な光を孕んで輝きを増してきた。 「これでお仕舞い?」 いたずらっぽく、せつなが見詰める。 「ラブは、まだ足りないんじゃないの?」 「……そんな事言って。知らないよ?」 泣いても、止めないからね? ラブもパジャマを脱ぎ捨て、再び、お互いの体に手を伸ばす。 素肌に直接感じる温もり。体の芯が熱く蕩け出す。 もう、せつなのくれる温もり以外に何も考えたくなかった。 せつなの片足を抱え、お互いの秘肉を重ねる。 ちゅく…と濡れた音を立てて、秘唇が吸い付き合う。 快感が脊髄を駆け昇り、全身に広がる。 ラブは取り憑かれたように夢中で腰を振る。 蜜の絡んだ突起が擦れ合う度に、突き抜けるような快楽に全身が さざ波立つ。 寄せては返す波のように、体の隅々まで満ちた快感が、また繋がった部分に集まってくる。 「せつなっ……せつな…せつな…、せつな…ぁ…」 「…ラブ……ラブっ……ラブ………」 うわ言のように、お互いの名前を繰り返す。 それ以外の言葉を忘れてしまったかのように。 もう、どちらがどちらの体かも分からない。 絡み合い、もつれ合い、それなのに決して一つには溶け合えない。 どちらが何度、絶頂を迎えたかも分からない。 意識が遠のき、片方が与える刺激で目覚め、また飽く事のない 快感の波に飲み込まれてゆく。 溶け合えいないもどかしさが哀しくて、ひたすらすべてを忘れて睦み合う。 (……きりがない…。) どれほど求め合っても、波が引くとまた次が欲しくなる。 もっと、もっと、もっと……。 やがて、意識が白濁し、ぬるま湯に浸されるように、眠りに引き込まれて行った。 窓から差し込む薄青い光で、夜明けが近いと知れた。 全身にせつなの温もりを感じる。 体を絡め合ったまま、同時に意識を失ったのだろう。 「……ラブ……。」 薄く目を開け、せつなが額を寄せる。 ラブは唇に軽く口付けてから、少し体を離す。 せつなの体に残る、おびただしい愛撫とも言えない蹂躙の痕。 キスマークだけでなく、強く掴んだ指の跡が痣になり、所々噛み痕すら 残っている。 「……痛かった…よね?」 痣や歯形に指を這わせながら、ラブは自己嫌悪に陥りそうになる。 いくら容赦しないと言っても、やり過ぎだ。 「平気よ?私だっていっぱい付けたし。」 確かに、ラブの体にも花弁を散らしたようにキスマークが踊っている。 「せつなの、平気よ、はアテになんないからなぁ。」 せつなの頭を抱きかかえると、首筋にクスクスと笑う吐息がかかる。 「ね………、せつな。……本当に、あたしでいいの?」 せつなのたった一人の恋人。 手を繋ぎ、共に歩く。抱き合い、その唇に触れる事が許される。 ズルい聞き方だ。 ラブがいいの。ラブじゃなきゃ嫌。そう言って欲しいのが見え見えだ。 言ったそばから恥ずかしくなり、抱き締める腕に力が籠る。 せつなは答えてくれない。 少し不安に襲われ、ラブはせつなを覗き込む。 心の奥底まで、見透かすような瞳。せつなにじっと見詰められ、ラブは微かにたじろぐ。 せつなはラブの手を取り、ゆっくり体を起こし、ラブの手のひらを 自分の左胸に導いた。 「しっかり、掴んで。」 手のひらに、脈打つせつなの鼓動。 「あなたのものよ。」 ラブはせつなの心臓を握り込むように、乳房を掴む。 ラブも同じく、せつなの手を自分の左胸に押し当てる。 そのまま、唇を重ねる。 触れ合うだけの、長い長い口付け。 「……誓いのキス、みたいだね。」 永遠の愛を誓う、神聖な儀式。 時は流れる。人は変わる。それが分からないほど、二人は幼くはない。 けど、それでもまだ、永遠を信じられる。 信じたいと思っている。 病める時も。 健やかなる時も。 死が二人を別つまで………。 青い薄闇から、白く光り始めた朝日の中。 神様にではない。 お互いの手のひらの中、強く脈打つ命に、 そう、誓った。 黒ブキ24最終章へ
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/345.html
第14話 初夜 金曜日、せつなは久しぶりに学校に行った。 本当は週明けから登校の予定だったけど、早く行きたいと言う本人の希望。 それに、週末ならもしまた疲れて体調を崩しても土日で休めばいいだろう、 と言うお母さんの判断からだった。 クラスはちょっとした騒ぎだった。 休み時間は色んな子が入れ替わり立ち替わり。 せつなが疲れないかとちょっと心配したけど、嬉しそうにクラスメイトと お喋りしてる様子にホッとしたりも。 生真面目なせつなは、休みの間もちゃんと自習してたみたいで 授業の遅れなんかも問題ないみたい。 「せつなぁ、疲れてない?」 「平気よ。久しぶりにみんなに会えて楽しかった。」 「あんま無理しちゃダメだよー。」 「本当に平気だってば。」 帰り道、まだ少し興奮気味のせつな。 ニコニコと楽しげな笑顔にこっちも嬉しくなる。 また、こんな風に笑い合えるようになれた。 そして他愛のないお喋りに興じながらも、あたしの心はつい別の欲求が……。 (………もう、そろそろいいんじゃないかな……?) 学校に行き始めた。と、言う事はせつなは体調面ではほぼ回復したって事で。 体調が戻った、と言う事は、つまり…… (………もうそろそろ、ね……?) 夕飯時、今日一日の事を話しながらの団欒。 お父さんもお母さんも、すっかり元気を取り戻したせつなに安心したみたい。 弾む会話を耳の端で捕らえながらも 、あたしは気もそぞろ。 何度か頓珍漢な受け答えをしてしまったらしく、お母さんやせつなに 妙な顔をされてしまった。 (さて……、どうするか。) 夜、バスタイムも済ませ後は寝るだけ。 せつなが倒れて以来、せつなに添い寝するのが習慣になっていた。 腕枕したり、おでこにお休みのキスをしたり。 腕の中で安らかな寝息を立てるせつなを見て、自分も幸せな気分に浸れた。 (エッチするのが、すべてじゃないよね。) 安心しきったせつなの寝顔を眺めながら、今までの自分を反省した。 無理に体を繋がなくたって心が繋がっていれば、こんなにも満たされる。 でもまぁ、そんな清らかな気持ちは続くもんじゃないね………。 だって、大好きな人が腕の中にいるんだもん。 甘い髪の匂い。ぴったり密着した柔らかい体。至近距離で誘うように 少し開いた、ふっくらした唇。時々、寝言で「ラブぅ~……」なんて囁かれて、 ギュッと抱きつかれたりなんかして。 正直、何度理性が振り切られそうになったか……。 なまじ、ぴったりくっついてるもんだから一人で、その…ね? いろいろイタして欲求不満を解消するワケにもいかず。 (そろそろ解禁……してもいいと思うんだよ。) 高鳴る胸を鎮めながら、ベランダからせつなの部屋へ。 せつなはラブの姿を認めると、微笑んでベッドを半分空けて待っている。 ラブが滑り込むと、せつなは嬉しそうに身を擦り寄せて来る。 (……ちょっと、がっつき過ぎかなぁ。) 無邪気な笑顔のせつなを抱き締めながら、ラブはちょっと反省する。 学校に行き始めた、その日の晩から待ってましたとばかりに、 手を出すのは……。 さすがにお行儀が悪いだろうか。 いやいや、でも十分お利口さんに我慢してたんだし。 あー……、でもなぁ。 「ねぇ……、ラブ?」 悶々と考え込んでいるラブを不信に思ったのか、せつなが上目遣いに ラブを覗き込んでいた。 「あぁ…、ゴメン、何?」 「あのね、……私、今日学校に行ったでしょ?」 「うん、そだね。疲れなかった?」 「うん。それで、その……もう、元気だと思うの、私。 ………だから、……その…」 「……?!」 俯き、目を伏せてもじもじするせつな。その顔は薄暗い部屋でも はっきり分かるくらい赤くなっていて…。 (これって……。これってもしかして……!) 「………して…、欲しいな……。」 ボンっ!と音が聞こえるくらいに頭に血が昇った。 今のあたしの顔はせつなも比べ物にならないくらい真っ赤っ赤のはずだ。 今までの数え切れないくらい抱き合って来たけど、せつなの方から こんな事を言ってきたのは初めてだ。 「…あの、嫌ならいいんだけど……。」 「イヤイヤイヤ!まさかまさか!」 あれ?ちょっと、せつな。何か涙ぐんでない? 「え?ちょっ!何で泣いてんの?」 「……だって、嫌なのかなぁって……。」 「ちょっと待ってよ。何でそうなるの?嫌なワケないでしょ!」 「……ずっと、キスも……してくれなかったし。」 ………脱力した。何でそうなるかな。 あのねぇ、せつな。出来るワケないでしょ。 キスなんかしたら我慢できなくなっちゃうに決まってる。 何のための禁欲生活なんだか。 あたしは、はあっ…と溜め息をついてせつなに覆い被さった。 「…ラ、ラブ?」 あたしがせつなの胸に顔を埋めると、せつながおずおずと頭を撫でてくる。 「もう、何のための我慢なんだか。せつなが寂しい思いしてたなら、 意味ないよ。」 あたしは顔を上げて、せつなの頬を両手で挟む。 「ずっと我慢してたの。ずっと、せつなに触りたくて仕方なかったんだよ?」 せつなが何か言いかけたのを、人差し指で止める。 何を言おうとしたか分かったから。 「ごめんなさい、は無しだよ。」 せつなが困ったように苦笑する。やっぱり、謝ろうとしてたんだ。 「だから、これからはちゃんと話そうね。」 悪い癖だ。相手の気持ちを確かめもしないまま、落ち込んだり傷付いたり。 言葉も気持ちも、出し惜しみして良いことなんてないのにね。 「……分かったわ。」 潤んだ瞳のまま、ようやくちょっと微笑んでくれた。 堪らなく、愛しい。 二度と、辛い思いなんてさせたくない。 「………抱くよ?」 パジャマの上から柔らかな膨らみをなぞる。 久しぶりに手のひらで感じる、せつなの乳房。 布越しに乳首を引っ掻くと、はあっ…とせつなが息の塊を吐き出す。 せつなはラブの首を抱き寄せ、キスを求める。 唇が触れ合った瞬間、ラブの中で今まで辛うじて押し留めてあった欲望が弾け、 溢れ出した。 (ああ……、ダメだ。ゴメン、せつな…) 吐息まで絡め取ろうとラブの舌が、せつなの舌を逃がすまいと追いかける。 パジャマのボタンを外すのももどかしく、思い切りに左右に引っ張る。 ボタンが幾つか弾け飛んだ。 下着ごとズボンを引き下ろし、足を開かせ、その間に自分の体を割り込ませる。 指の跡が付くほど強く乳房を揉みしだく。痛みにせつなが眉を寄せ、呻く。 外気に晒され、尖った乳首を人差し指で弾き、さらに硬くなったところを 摘まんで捻る。 「…!!やっ…!はぁあああ…!はっ…あ…」 思い切り開かせた腿の間に顔を埋め、濡れ始めた部分に吸い付く。 秘唇を抉じ開け、舌を捩じ込むとせつなは声にならない泣き声を上げ、 弓なりに背を反らした。 「はぁっ…、はあっ…、はあっ…あっ、あっ………あぁぁ!!」 舌で解した肉の入り口に指を沈めて行く。内壁の粘膜が指を包み込み、 奥へ誘うように蠢く。 痛々しいほどに赤く充血した蕾を硬く尖らせた舌先でくすぐると、 舌が触れる度にせつなの腰がびくびくと小刻みに跳ねた。 頭の上で、はっ、はっ、はっとせつなが細かく息を付くのが聞こえる。 矢継ぎ早な強い刺激に声をあげる事もできなくなっているのだろう。 限界まで膨れた蕾を強弱を付けて吸い、指で中を深く抉る。 「ーーー!!くぅっ…!んっ、んっ!」 せつなが体を硬直させ、ピンと伸ばした足先がきゅっと丸まる。 硬くシーツを掴んでいた手を開かせ、ラブは自分の指を絡ませる。 「……せつな………。」 虚ろな目で息を弾ませているせつなを、そっと抱き締める。 背中にせつなの腕が回されるのを感じる。 どうして、こんな風にしか出来ないんだろう。 優しく、するつもりだった。お姫様に傅くように。宝物を扱うように。 優しく、優しく綿毛のように愛撫して。 痛い思いも、苦しい思いもさせず、ただせつなが気持ちよくなれるように。 それなのに、せつなを欲しがる心を体が制御できない。 容赦のない、性急な愛撫。攻め立てるように貪る事しか出来なかった。 「ゴメン、……せつな…。」 「どして?……どして、謝るの?」 私、嬉しかったのに。 我を忘れて、ラブが求めてくれてる。自分を抑えられないくらいに。 「ラブ……優しかったわよ?」 「……そんなワケないよ…。」 「ホントに。……すごく、大切に抱いてくれた……。」 違うの? 悲しくなるくらい、綺麗なせつなの笑顔。 どうして、せつなはこんなにも綺麗でいられるんだろう。 幾つもの闇を潜り抜けて来たせつな。その度に、曇りが研がれ、 複雑な光を孕んで輝きを増してきた。 「これでお仕舞い?」 いたずらっぽく、せつなが見詰める。 「ラブは、まだ足りないんじゃないの?」 「……そんな事言って。知らないよ?」 泣いても、止めないからね? ラブもパジャマを脱ぎ捨て、再び、お互いの体に手を伸ばす。 素肌に直接感じる温もり。体の芯が熱く蕩け出す。 もう、せつなのくれる温もり以外に何も考えたくなかった。 せつなの片足を抱え、お互いの秘肉を重ねる。 ちゅく…と濡れた音を立てて、秘唇が吸い付き合う。 快感が脊髄を駆け昇り、全身に広がる。 ラブは取り憑かれたように夢中で腰を振る。 蜜の絡んだ突起が擦れ合う度に、突き抜けるような快楽に全身が さざ波立つ。 寄せては返す波のように、体の隅々まで満ちた快感が、また繋がった部分に集まってくる。 「せつなっ……せつな…せつな…、せつな…ぁ…」 「…ラブ……ラブっ……ラブ………」 うわ言のように、お互いの名前を繰り返す。 それ以外の言葉を忘れてしまったかのように。 もう、どちらがどちらの体かも分からない。 絡み合い、もつれ合い、それなのに決して一つには溶け合えない。 どちらが何度、絶頂を迎えたかも分からない。 意識が遠のき、片方が与える刺激で目覚め、また飽く事のない 快感の波に飲み込まれてゆく。 溶け合えいないもどかしさが哀しくて、ひたすらすべてを忘れて睦み合う。 (……きりがない…。) どれほど求め合っても、波が引くとまた次が欲しくなる。 もっと、もっと、もっと……。 やがて、意識が白濁し、ぬるま湯に浸されるように、眠りに引き込まれて行った。 窓から差し込む薄青い光で、夜明けが近いと知れた。 全身にせつなの温もりを感じる。 体を絡め合ったまま、同時に意識を失ったのだろう。 「……ラブ……。」 薄く目を開け、せつなが額を寄せる。 ラブは唇に軽く口付けてから、少し体を離す。 せつなの体に残る、おびただしい愛撫とも言えない蹂躙の痕。 キスマークだけでなく、強く掴んだ指の跡が痣になり、所々噛み痕すら 残っている。 「……痛かった…よね?」 痣や歯形に指を這わせながら、ラブは自己嫌悪に陥りそうになる。 いくら容赦しないと言っても、やり過ぎだ。 「平気よ?私だっていっぱい付けたし。」 確かに、ラブの体にも花弁を散らしたようにキスマークが踊っている。 「せつなの、平気よ、はアテになんないからなぁ。」 せつなの頭を抱きかかえると、首筋にクスクスと笑う吐息がかかる。 「ね………、せつな。……本当に、あたしでいいの?」 せつなのたった一人の恋人。 手を繋ぎ、共に歩く。抱き合い、その唇に触れる事が許される。 ズルい聞き方だ。 ラブがいいの。ラブじゃなきゃ嫌。そう言って欲しいのが見え見えだ。 言ったそばから恥ずかしくなり、抱き締める腕に力が籠る。 せつなは答えてくれない。 少し不安に襲われ、ラブはせつなを覗き込む。 心の奥底まで、見透かすような瞳。せつなにじっと見詰められ、ラブは微かにたじろぐ。 せつなはラブの手を取り、ゆっくり体を起こし、ラブの手のひらを 自分の左胸に導いた。 「しっかり、掴んで。」 手のひらに、脈打つせつなの鼓動。 「あなたのものよ。」 ラブはせつなの心臓を握り込むように、乳房を掴む。 ラブも同じく、せつなの手を自分の左胸に押し当てる。 そのまま、唇を重ねる。 触れ合うだけの、長い長い口付け。 「……誓いのキス、みたいだね。」 永遠の愛を誓う、神聖な儀式。 時は流れる。人は変わる。それが分からないほど、二人は幼くはない。 けど、それでもまだ、永遠を信じられる。 信じたいと思っている。 病める時も。 健やかなる時も。 死が二人を別つまで………。 青い薄闇から、白く光り始めた朝日の中。 神様にではない。 お互いの手のひらの中、強く脈打つ命に、 そう、誓った。 第15話 傷跡と道標(R18)へ続く